「下草刈りと、自然に教わったこと」
私が子供のころ、夏休みといえば“下草刈り”でした。今のような草刈り機はまだなく、大きな鎌を手に、両親と一緒に山へ入って草を刈る。汗だくになりながら、静かな山の中で黙々と作業していたことを、今でもよく覚えています。
高校生の頃までずっと鎌でやっていましたが、大学生になった頃に草刈り機が出てきて、「なんて便利な世の中になったんやろ」と本気で感心しました。
そんな草刈りで、特に怖かったのが雷です。お昼過ぎまではカンカン照りで暑かったのに、午後2時~3時頃になると急に空が暗くなって、大粒の雨が落ちてきて、ドーンと目の前に稲光が走る。まさに自然の力を目の当たりにして、生きた心地がしなかったのをはっきり覚えています。
もうひとつ怖かったのが蜂。夢中で草を刈っていると、どこかにある巣に気づかずに作業を続けてしまうことがあります。すると、知らないうちに巣を鎌で切ってしまい、蜂たちが一斉に襲ってくる。長い柄に沿って登ってくるので、2〜3ヶ所立て続けに刺されたこともあります。スズメバチに刺されたときは、あまりの痛さに思わず叫んでしまいました。
そんな体験の一つひとつが、自然に対する畏敬の気持ちや、慎重に向き合う姿勢を教えてくれたように思います。
木と向き合うというのは、ただの作業ではなく、命と関わることなんだと。
家づくりも同じです。見えないところに手を抜かず、丁寧に積み重ねていくこと。それが安心や暮らしやすさにつながります。
あの頃の下草刈りが、今の自分の土台になっています。自然に教わったことを忘れずに、これからも心を込めて、住まう人のことを想った家づくりをしていきたいと思います。